何も聞き留めなかった私の耳が捕らえた自分の名前。
声のした方を向いた。
そこには、茨と亜利哀がいた。
二人の姿を見て、やっぱり仲良いなと感じた。
「何してるの?」
久しぶりに聞いた茨の声。
私は微笑んで返した。
茨は何でかパーカーの下に着ている服に、紅い絵の具が付いていた。
「今からホテル行くけど、雨水ちゃんも行く?」
中学生三年生の私は、お金を持っていない。
でも、亜利哀は返事を聞く前に歩き出して行っちゃったから着いていく事にした。
大きいホテルだった。
「亜利哀のお父様の会社の系列のホテルなんだよ。」
とこっそり茨は教えてくれた。