もういいや、入っちゃえ。
ドアを開けるとそこには布団にくるまっている隼人の姿が。
スースーと寝息をたてて眠っている。
可愛い寝顔しちゃって。私が男だったら間違いなく襲ってるよ!
…別に変態とかじゃないよ?そういうことじゃなくて…。
ただ…可愛いって思っただけなの。
「…美優?」
や、やばい。隼人、起こしちゃった。
「は、隼人、おはよっ!」
「おはよっ!じゃないし。なにしてんの?こんなとこで」
「…別に」
「ふーん。俺の寝顔に見惚れてたくせに」
えっ?なんで知ってるの?
まさか起きてた!?スースー寝息たててたのは嘘!?
なんか…最悪な展開。ここにいたくない。
いたら何かが壊れそうな気がする。
やだ、やだ、やだ。
だけどあなたはそんな私の思いを消してくれた。
「まぁ俺の寝顔は美優限定だから」
その言葉にキュンとした。兄弟だということを一瞬だけ忘れさせてくれた。
チクッチクッ
時計の針が静かな部屋に響く。その音にそわそわする私。
「はーい。手を止めて。後ろから答案用紙回してこーい」
…終わった。私の人生、半分終わった。
「美優~。テストどうだった?」
満面の笑みで私を見る沙樹。
沙樹は成績優秀、テニス部、部長。
成績優秀とかうらやましいよ。その頭、私にちょうだい。
「だめだめ~。難しかった」
「そうかな~?簡単だったよ?」
…あなたねはね。軽く嫌味入ってたよ~?
も~別にいいけどさっ。自分がバカだってわかってるし。
「そういえば隼人くんもテストだよね」
隼人もテストか…。絶対、赤点だと思う!
だって勉強してなかったもん。ノート、真っ白だったもん!
「ちょっと見に行かない?」
「…えっ?行くの?」
こんな昼間から隼人を見れちゃうなんてテンション上がる!
なんかね、家にいるときと学校にいるときの隼人はちょっと違うの。
制服姿がまた新鮮で萌える。
何回も言うけど私は変態じゃないから!
「なに?弟がテストで良い結果取ってるところが見たくないとか?」
それもあるけどさ。
「まぁ…ね」
曖昧な言葉しか出てこないです。てか早く隼人に会いたい。
ほんとは早く行きたくて体がドアところを向いている。
「じゃあ行っちゃおっか~」
よしっ!やっと行くのね!髪の毛ばっちりチェックして、メイクしっかり直して。
付き合いたて!みたいな感じになっちゃってるし。
でもやっぱり隼人には可愛いって思われたいし。
「てかさ、なんでそんなに鏡でチェックしてるの~?」
ギクッ
さすが、沙樹さん…。するどいなー…。
でもバレちゃだめなの。この気持ちは私だけの秘密だから。
誰にも言えない私の思い。
「き、気のせいだよ!だって弟に会いにいくのにわざわざ…ねぇ~」
沙樹の顔を恐る恐る見る。はい、疑いの目が私に向けられている。
「ほんとに?」
「う、うん!ほんとだよ?」
「それならいいのよ~」
ごめんね。やっぱり沙樹には言った方がいいのかも。
でももう少し待って?気持ちの整理がついたら全部話すから。