その頃俺は、デニッシュを食べていた。
見つからないように、ひっそり桜の下でーーー

「へぇ。意外とおいしいじゃん。」

甘くほろ苦いチョコレートデニッシュの中に
苦さをかき消すような甘い甘いはちみつ。


これは恋の味。


恋は甘くもあるけれど誰かが辛い思いをしなければいけない。


・・・恋は犠牲が必要なんだ。


それを表しているようなこのデニッシュ。
心を切なくさせるこの味。

「何なんだよ。」

サァ・・・

風が吹き、桜の木が揺れた。
綺麗な桜がひらひら舞う。
その中から現れた桜色の髪の女の子。

「王架・・・・?」