古城の中では、一人の女性がロウソク片手に、漆黒の長髪をゆらゆら揺らせながらゆっくりと歩いていた。ロウソクの灯りが、彼女の見目麗しい顔立ちを不気味に照らしだした。
「おやぁ〜…。今日はやけに静かだねぇ〜…。」
ふらふらと炎とともに揺れながら廊下を歩いていると、ふと小窓が目についた。彼女は、小窓に近付くと、外を覗きじーっと目を細めた…。
しばらくすると、彼女の口元がふっと緩み、不適な笑みをこぼした。

「あぁ〜…そうだぁ。坊やがいなかったからだねぇ〜…。」
彼女は、ふっとロウソクに息を吹き掛け灯りを消すと、闇を楽しむように鼻歌を歌いながら玄関に歩いていった…。