段々視界がハッキリしてきた…。
鬱蒼とした大きな木に、黒髪の人影…


「…!!ッ…メドゥー…」


咄嗟に起き上がると、ノアは素早く後ろに退った。
…が、何を隠そうココは太くても枝の上。
少しさがれば枝から落ちそうになる。
案の定、ノアは足を踏み外しバランスを崩してしまった。

ふらつくノアをメドゥーサは咄嗟に腕を掴み、間一髪のところで落ちずにすんだ。
しかし、勢い良く引っ張ったおかげで、ノアは前のめりにしゃがみ込むように倒れてしまった。
その拍子で、ノアの懐から長方形の木箱が転げ落ちてきた。

息を切らしてしゃがみ込んでいるノアを横目に、メドゥーサは、サッと木箱を拾いあげた。
「なんだァ?これ〜…?」
ノアがマジマジと木箱を眺め回す。
ようやく呼吸が整ったノアは、その様子に気がつくと慌ててメドゥーサの手の中から、木箱を奪い返した。
「か…返してッ!!」
メドゥーサは木箱をとられた手の平を、じっと見つめ続けた。
「んだよ…。そんなに大事なもんか?」
メドゥーサがため息混じりに話し掛けた。

暫らく、無言の間があいた…。

が・一時すると、ノアが小さく声をもらした。
「…お婆様の形見だから…。」


再び沈黙が訪れる…。