「父上こそ…こんな夜更けに起きてるとは。」
少年は、前を向いたまま返事をした。すると、父は少年の隣に立ち、彼もまた月を見上げ煙管を吹かした。長い沈黙が二人を包んだ…。


先に口を開いたのは、少年だった。
「なぁ…アンタはどうして戦うんだ?」
父は煙管を吹かして天に輪を描いた。それは、月をすっぽり覆った。
「『生き残りし者に大地を与えよう』…って神の御告げさ。俺達は生き残る。そのためだけに戦っている。」
少年は空かさず父の顔を覗き込んだ。
「それだけ?」
一時、少年と見つめ合った…。その瞳に、すべて見透かされているような気がした。父は、ふっ、と笑みをこぼした。


「ヤツ等に対する積年の恨み…。許しゃしねぇよ…。ノアも…メドゥーサも!!」長髪に隠れて父の顔が見えない…。
父の煙管を持つ手がわずかに震えていた。