「な…んだ…?これは…。」
目に飛び込んできた巨大な窪みにギルバードは絶句した。
大きく窪んだ巨大な穴は、あまりの深さに底が見えない。
ただ、まるで別世界のように窪みの中を鬱蒼と草木が生い茂っていた。
草木だけでなく、多少苔がこびり付いた白塗りの小さな宮殿が草木に紛れてひっそりと存在していた。
その場が空洞であったように、一つの都市が大穴に出没したのである。

突然の出来事に誰もがただ呆然と穴の中に見入っていた。
しかし、そういった人々を尻目にディヴァイアは、颯爽と大穴に歩み寄っていった。
そして、腰を曲げ穴を覗き込むとﾆﾔﾘと片口をあげた。
「おやおや、珍しいモノに遭遇してしまいましたねぇ〜♪」
ディヴァイアは素早く体を起こすと、ゆっくりと仰け反り腰の痛みを和らげた。
体を戻すと、顔には意味深な笑みを浮かべていた。
近くでその様子を見ていたギルバードは、その妙な男の様子に眉をひそめた。
「…ここが、エデンの園か…」

「…!?…」
ポツリと零れ落ちたディヴァイアの言葉に、ギルバードは目を見開いた。

ギルバードの視線に気付いたディヴァイアは、横目で唖然としている彼を鼻であしらった。

「おやおや、情けない面ですねぇ、Dr。何を呆然としているのです？」
冷たく言葉を放つと、ディヴァイアはくるりと反転し大穴に背を向けて立った。
「『運命の鍵は…エデンに有り』。この意味を知りたかったら、どうぞ私の後に着いてきてください。もっとも…」
ディヴァイアの重心が後ろにかかり、体が斜めになった…。
「そんな度胸があれば…ですｹﾄﾞね♪お先に失礼、Dr.ギルバード。」
そして、ディヴァイアは大穴に飲み込まれて行った。
「運命の…鍵??」
まだ思考が追い付いてない状態で、ギルバードの体はゆっくりと動きだした。

アイツを追い掛けなければ…
何故かはわからないけど…そうしなければならない気がする…

そうして、ギルバードの体はゆっくりと大穴に吸い込まれていった…。