漆黒の闇に、微かな明かりがどんよりと浮かび上がった。
不気味な鳴き声のみ闇に姿を現している。
そんな中、闇と一体化せんばかりの漆黒の髪を揺らしながら、一人の少年が闇に不釣り合いな澄んだような鼻歌を歌っていた。
ランプに照らされ、金色の瞳が際立って見える。
漆黒の髪は、肩に掛かるか否かという具合に伸び、上頭部は不規則に上向きに伸びている。前髪は右目を覆い隠すように伸びていて、左目のみ金色の瞳を確認できる。
少女かと思わせるその顔立ちは、どこかやんちゃさを感じさせる。
少年は片手にぶら下げていたランプを持ち上げ、ぼんやりと灯る明かりを眺めた。
「明る〜い♪」
少年は目を細め、嬉しそうに口角を上げると、ランプを大事そうに抱えこんだ。
ふと、背後からバサバサと忙しい羽音が近づいてきた。
「メドゥーサ・サマ!タイヘン!タイヘン!センソウ・ハジマッタ!!」
真っ黒な羽を身に纏ったカラスが、メドゥーサ少年の背後でぴょんぴょんと忙しく飛び上がっていた。

…キタ!!…

メドゥーサの口角がグッと引き上がる。
「…ジナ…。皆に伝えろ。」
クルリと振り返り不気味なほほ笑みでジナと呼ばれるカラスを見下ろした。
「今から僕は地上に散歩にいくから、ついてきたい奴は来な・ってね♪」
ジナは羽をバタつかせ、ゆっくりと宙に舞い上がった。
「リョウカイ!リョウカイ!メドゥーサ・サマ・ノ・デンゴン!!」
喉が潰れたような鳴き声を喚き散らしながら、真っ黒い点が空の彼方に消えていった。
ジナを見送ると、メドゥーサは遠くにそびえる古城に向かって歩きだした。
歌い慣れた鼻歌を軽快に歌いながら…。

スッポリと闇は彼を包み込んだ。