朝日が雲の下から顔を出した。方舟の巨体の底から徐々に太陽に照らされていく。しだいに船内に光が差し込んでいった。
一人の女性が、眼下を眺めるように船首に立っていた。金色の髪が風になびいて乱れている。真っ白な肌が朝日に照らされ、よりいっそう輝いた。
「おやおや…今日は早いんですねぇ、ノア様。」
パーマ掛かった金色の長髪を垂らし、真っ白な肌をした男が彼女に近づいてきた。年にして20代後半である。がっちりした体格で、180センチ強の背丈。眼光に謎を秘めたような垂れ目をしている。
ノアと呼ばれた女性は、振り向き瑠璃色の瞳を彼に向けた。
「まぁね!ちょっと落ち着かなくて、目が覚めちゃった。」
背後に照り上がる太陽にも負けない程のまぶしい笑顔を向けた。
「あら、アナタも早いんじゃない?ゼノン。」
ゼノンと呼ばれる男は、口の端で笑いを零し、ノアの隣に立ち眼下を見下ろした。
「あの日から丁度10年…。とうとうこの日がきましたねぇ…。」
垂れ目を一層細め、眺めた。視線の先には、過去に先代達が死闘を繰り広げた荒野があった…(もっとも、現在は再び草が生えて草原になってるが…)。

しばし沈黙が流れる…。

沈黙を破るように、ノアがゼノンの背中を軽く叩いた。ゼノンは、我に返った様子で隣をみた。が、彼が目をやったときにはすでにノアの姿は隣になく、気付いたときには彼女の部屋の扉の前に立っていた。
「さぁっ!ボサッとしてる暇はないわよ!!さっさと武装を整えて大地を取り戻しにいくわよっ!!」
力強い笑みを見せて、ノアは自室に入っていった。