手入れをしていた兵はロイに頭を下げようとしたが、ロイが手の平を突き出してそれを止めた。
「ロイ隊長、フェリシアの調子は絶好調ですよ。」
兵士は、ロイに笑顔を向けると、鞍を取りにいくために、馬房を出た。
ロイは兵士の後ろ姿を見送ると、再びフェリシアに向きかえった。
そして、自分の体をフェリシアの顔に預け、優しく腕で包んだ。
「今日は頼むぜ?ジャジャ馬娘♪」
彼女は、じっとロイの温もりを感じていた。
兵士が戻ってくると、ロイは体を起こし、
「あとは頼むぜ。」
と、言うと、フェリシアを後にした。
そして、納屋の中央に差し掛かると、ピタリと足を止め、声を張り上げた。
「いいか、てめぇら!
馬装は一頭につき一人ついて、他の奴らは大穴に入るための運搬機の設置にとりかかるぞ!!
日が完全に昇る前に仕上げなきゃなンねぇかンな〜。
敏速かつ丁寧に頼むぜ??」
そう言うと、ロイは自らの出動準備をするために自室に一旦戻ることにした。
残された兵達は、素早い動きで、鞍付けをはじめた。
何人かは、急いで外に出て、大穴に降りるための運搬機を設置している近衛隊のもとに向かった。