『黄昏の詩人
  涼風 拓』


決して超豪邸という訳では無い……しかし、隅々に渡るデザインにはこだわりの見られるその家の表札には、そんな文字が刻まれていた。


「ここが涼風さんの家。…くれぐれも言っておくけれど、決して失礼の無いようにね!」


まるで、子供達を引率する先生のような口調で、シチロー達の方へと振り返り念を押すてぃーだ。


「は~~~い♪」


満面の笑顔で声を揃える三人を見ると、てぃーだは不安な表情のままに備え付けのインターホンに手を伸ばした。



♪ピンポーン



「こんにちは、涼風さ…」

「やあ!ティダじゃないか♪」


てぃーだがその言葉を言い終わらないうちに、玄関のドアが勢い良く開き、中から出て来たのは、三十代半ば位の細身の男性だった。


「今な、知り合いから頂いた魚を焼いているところだ。良いところに来た。さっ、入って、入って!」


涼風はそう言うと、てぃーだの背中を押しながらせわしなさそうにシチロー達にも家の中に入るように促す。


「あの…涼風さん…この三人は、アタシの……」


「紹介は後だ!魚が焦げてしまうっ!」


(なんともせっかちな人だな…)


初めて見たシチローの涼風に対する印象は、こんな感じだった。