「休憩は終わりだ!全員仕事を再開させろ!」

鉱山の警備員の声が辺りに響く。そちらの方を振り向けばその声を合図に持ち場へと急ぐ労働者達の姿があった。自分も持ち場に戻らなくてはいけない。

ふと陸の方を振り向くと淋しげな表情で俺を見つめていた。目元には滴が貯まっている。俺がもう行く事をつげると陸は俺の豆だらけの手にそっとくちづけた。

「また来てよね。涼。」
「おん、絶対くるから。」

手を振る陸の姿を後に持ち場へと走った。そこでは既に母が仕事を再開させていた。鉱石を掘り出した後の土を運ぶ母の横に立って母の荷物を抱えた。母の視線が俺に向けられた。

「友達が出来たみたいね。」
「おん、なんでかしらんけどな。」
「本来、人は悪くないものなのよ?」

荷物を外に運びだし地面に置いた俺の顔を覗き込むように見ながら母が言った。