「ススだらけになって‥。」
「エルフだなんかと一緒にいるからああいうめに合うのよね‥」

村の中に一歩足を踏みだせば陸と俺を罵る小さな声があちらこちらから聞こえてくる。

いつだってそうだ。エルフの血の流れる俺は、この村の人達にとっては野蛮な存在なのだ。

「僕、お腹すいちゃったなぁー。」

‥こいつを除いて。隣でお腹をさすりながらヨタヨタ歩く陸を見て、俺にはやはりこいつしかいないのだ、と思った。だからこそ俺が守ってやりたいと思う。

陰口を叩く奴らをにらみつけながら我が家へと帰ってきた。陸のご飯ー!と叫ぶ声が部屋中に響く。それに微笑まずにはいられなかった。

「焦らんでもええやろ。食うやつは俺とお前しかおらんのやから。」
「あ、それもそっかー!おー!僕これ食べたい!食べたい食べたい」
「うるさいわ!俺が食うぞ。」
「やだー。涼のいじわるー。」

刺さるような視線の中にも暖かい笑顔が確かにそこにあった。