「涼!行っちゃダメだよ!」

いきなり俺の腰に冷たい腕が巻き付いた。そしてそのまま俺を行かさまいとぎゅっとしがみついてきたのだ。

「ダメだよ!涼、死んじゃうよ!」
「でもっ、かぁさんが!陸離してくれやっ」
「嫌だぁ!離さないもんっ」

しがみつく陸を体にくっつかせたまま母のもとに歩みよる。陸の重みでなかなか前に進めない。俺が母を呼び続けていた時母が口を開いた。

「涼来ちゃだめよ!お母さんもうダメみたいだから‥」
「そんなっ、今行くからっ!」
「貴方には守るべきものがあるでしょうっ!」

母の凛とした声が俺の耳に届いた。俺の守るべきもの‥。しがみついている陸に目を向けた。そして気がつく。

俺が死んだら誰が一人ぼっちの陸を支えるんだ?俺がいなきゃ誰がこいつを守るというのだ。