それは今から2年前、帝国のシルバ皇帝からユラ皇帝にかわった年の事だった。ユラ皇帝が"亜種類撲滅運動"を制定したのだ。

内容は、"人間を脅かす存在であるエルフ、ドワーフその他亜種類を撲滅せよ"という嘘ばかりの書き出しだった。それでも人々は賛成し皇帝万歳と歌うばかりであった。

そしてその少し後に皇帝はその時亜種の労働者が沢山集まっていたサムルに軍用獣フィアリザードの軍隊を送りこんできたのだ。亜種撲滅とは"少々の人間を巻き込んでもかまわないから"という事も含まれていたのだった。

「ぐぎゃー!があぁぁあ!」
「ひぃぃ!やめてくれー!」
「誰か助けてー!」

鉱山内はフィアリザードの吐くブレスに含まれる毒ガスで溢れかえり、中にいた亜種も人も抵抗の間もなく次々に事切れていった。

フィアリザードが立ち去った後には鉱山は異様な静けさで覆われていて、風だけがただ音を掻き鳴らしているだけだった。