低い、男の声だった。


「………誰だ」

『あんたの大事なもの預かってんだ』


クスクスと笑う携帯越しにいる男を消したいと思った。


「……何が目的だ」

『まぁそう慌てなさんな。』

「黙れ……早く麻理亜を返せ」

『ははっ相当大事なんだな?……まさか、あいつが社長夫人なんてな?』


さも可笑しそうに笑う男は、口振りからして麻理亜を知っているみたいだ。


「貴様……」

『まぁいいや。………夕方までに5000万用意してくれたら返してやるよ』

「ちょっと待て!!」

『また電話する』


一方的に要件を言われ、電話を切られた。