仁Side
俺は、ここ最近ずっと紅葉のことだ。
初めて一つになったときは、嬉しかった。
紅葉とサヨナラしてから俺はずっと、君のことばかり。
紅葉じゃない他の誰かを抱いてる時も、紅葉と重ねているんだ。
どうかしていると、誰かこの俺を笑ってもいい。
そんな自分自身に、ため息を吐くと紅葉が寝ていたベッドに腰掛けた。
―――ピンポーン
誰かがベルを鳴らしている。
まるで、他人事のように。
そのうち鳴りやむと思ったら、ドアが開いた音がした。
ここの鍵を持っているのは、晃と紅葉だけだが……
――バンッ
音のした方を見ると、晃がイライラした様子で俺の前に立っていた。
「仁、いるんだったら出ろよな」
そう言って晃は、俺を無理矢理立たせると、こう告げた。
『紅葉が二日も帰っておらず、行方が分からない』
まるで、鈍器で頭を殴られたようだった。