日曜日。


履歴書を持って、兄に言われた弁当屋に向かった。

弁当屋は個人経営らしく、聞いたことのない名前だった。

店に入ると、レジ兼受付の白衣を着た女性が「いらっしゃいませ」と笑顔で迎えてくれた。

綺麗な人だ。
長い髪を後ろで結わえていて、清潔感がある。


少し照れながら「バイトの面接で来たんですけど」と言うと、女性は「将大くんの弟さん?」と聞き返してきた。
僕は慌てて「はい」と答える。
その様がおかしかったのか、女性はくすっと笑って、「じゃあこちらへどうぞ」と、僕を事務室に案内した。

女性は僕に椅子に座るように促すと、「今、店長読んで来ますね」と言って、厨房へ隠れてしまった。


事務室と言っても、折りたたみの机が2つ横に並べられていて、パイプ椅子が6つしかない。
事務室じゃないだろう、という突っ込みを頭でして、部屋の隅にあるホワイトボードのスケジュールを見る。
付箋紙や発注用紙などが磁石やセロハンテープで乱雑に張られている。
ホワイトボードに何か書いてあるが、僕にはそれが何なのかわからないほど達筆の文字だった。


しばらく事務室を眺めていると、白衣に白い長靴、ゴム手袋と透明のビニール手袋をして、顔にはマスク、頭にはキャップをした小太りの男性が入ってきた。

きっと店長だろう。

店長は、手袋とマスクを外す。


「将大くんの弟くんだよね?」

「はい!」

「名前は?」

「将孝です!」

「将孝くん、来て早々に悪いんだけど、白衣に着替えてくれる?」


店長はロッカーからハンガーにかけてあった白衣を僕に渡すと、


「ちょっと来てくれる?」


と、僕を厨房に案内した。