「あ、あたし戻らないと」




「そ、」





あたしが立つ前に



ガタンッと音をたて、狭山くんが立ち上がった




「気をつけて、」





あたしの頭をポンポンと叩いて、出ていった









然り気無い仕草が胸をむさぐる








あたしは立ち上がった






ブーブー…ブーブー…






ケータイのバイブ音が鳴り響いた








さっきまで狭山くんが座ってた椅子の下にケータイがあった




「あ、」




狭山くんのケータイだ






「もう、行っちゃったか」




諦めてケータイをしまい、職員室へ戻った




「お疲れ様です」



「お疲れー、また明日」



ベテランの先生がまだいたが先に帰らせてもらった




職員昇降までいき、靴を履き替える



「あれ…」





生徒の昇降口の影に人影が見えた



「誰か居るの?」



昇降口を出ると、壁にもたれ掛かってる狭山くんがいた



「ケータイ忘れた」



「あぁ、はい」



あたしはケータイを渡した




取りにくれば良かったのに、




そう言うと


「めんどくさい」



といって、ポケットにケータイをしまった。