『拓様、どうぞ』
それにしても、大きな車。
よく、テレビで見るけれど。
ベンツ?
私にはよくわからないわ。
その黒い車の中で、手を差し伸べられる。
『さくら、おいで』
『白純美様、どうぞこちらへ』
声に従い、その黒の中に身を埋める。
中は、予想以上に広かった。
『では、出発致します』
気が付くともう、頼稜さんは、運転席に回っていた。
慣れているのだろうと思いながらも、異常なまでの仕事の早さに驚く。
『ねえ、頼稜さんっていくつなの?』
気持ち小さな声で、隣に座る拓に尋ねる。
『さくらは何歳だと思う?』
問い返されて、少し慌てる。
素直に、言うべきよね。
『あ、あなたと同じくらい』
そう言うと、拓はケラケラと笑った。
ち、違ったのかしら。
急に恥ずかしくなる。