『確かに頼稜は見とれるほど、美形かもしれないけどさ…』
え?
『白純美様?私の顔に何か付いておりますか?』
頼稜さんは、そう言ってニコニコ笑う。
───何か。
何か、勘違いされている気がする。
『さくら、あまりぼっとするなよ。一人で考え込むな。わかったか?』
前にも、言われたわね。
命令口調が少し気になったけれど、不安なんだと思うと、抗えなくなる。
『うん、出来るだけ気をつけるわ』
拓はあまり納得のいかない様子だったけれど、別にそれ以上に何も言わなかった。
再び瞳を頼稜さんに移すと、頼稜さんはまだ微笑していた。
『白純美様は、可愛らしいお方ですね』
『頼稜!!』
拓が声を軽く荒げる。
『拓様がお気に召されるのも、分かるような気が致します』
突拍子もないことを言いつつも笑顔を絶やさない。
それでも尚、優美だけれど。
『さ、さくらっ!!早く行くぞ。頼稜、車を』
恥ずかしいのか、心の動揺が言葉にも表れている。
『はい。かしこまりました』
ねえ、期待していいの?
そんなに動揺して。
貴方らしくない、そんな気がするんだけれど。
優美で、儚くて、落ち着いている、貴方らしく。
それが私のせいならば、そんなに嬉しいことはない。
大富豪の長男。
私は、そんな名に恋をしている訳じゃない。
西条拓。
この人に恋をしているのだから。