『俺の家に、来て欲しい』



『え…』



思わず言葉がこぼれる。


『家に、って…今から?』



拓は抱きしめる腕を、そっと離した。


『ああ。駄目か?嫌か?』




そんなこと問われたら、答えなんて一つ。





『ううん。わかったわ』



頬を優しく撫でる彼の手が、柔らかく微笑む彼が、温かくてたまらない。


どうしようもなく、


嬉しい。





『…じゃあ、頼稜を呼ばなくちゃな』



そういえば、頼稜さん、今日も彼の傍にいない。


昨日あんなに心配して、怒っていたのに。



また、連絡してなかったのかしら。


『また頼稜さんに内緒で、抜け出して来たの?』


思わず、微笑む。



『いや、今日はちゃんと言っておいた。また、さくらの前で怒られるのは嫌だからな』


そう言って携帯を開く。


拓は楽しそうに笑っていた。




私の前で、その言葉に嬉しくなってしまう。


私が、拓はここにいる気がしたのと同じように、

拓も、私はここにいると思ったのかしら。



通じ合えてると思うと、たまらなく、嬉しくなった。