『…に、しじょう───』
海斗の口から、ボロボロと言葉がこぼれる。
目を思い切り見開いて、一点を見つめている。
『海斗?拓を、あんた知ってるの?』
不思議に思って問いかけると、海斗は、はっとして、首を横に振った。
『し、知らねえよ。そんなやつ。あんな、気取ってるやつ』
一瞬、え?、と思ったけれど、海斗たちは拓を見たことがあるんだった。
帰りに遊ぼう、と話していた日に。
『拓のこと、悪く言ったら私が許さないわよ』
『別に許されなくたって、俺は困んねえし。ま、お似合いだよ、お似合い』
そう言って嘲笑う。
その姿が少し苦しそうに見えたのは、私の気のせい?
時々、海斗はよくわからなくなる。
まあ、そこまで気には留めないけれど。