『見つけたんだ』
そんな私の不安を断ち切るような、しっかりとした声。
『桜の中で、白純美を』
“白純美を”
また、胸が高鳴る。
名前を呼ばれた、だけで。
『大事な人、なんだ』
“大事な人”───?
私が、あなたの、大事な人?
拓は、私の腕にぎゅっと力を入れる。
『で、ですが、拓様…!!!!』
『頼稜。今日は帰るよ。だから見逃して?』
誰にも言えない、想い。
簡単には、知られてはならない。
『わ、わかりました。では、こちらへ』
拓は私の腕を離す。
拓の熱が無くなり、途端に不安に駆られる。
後ろ姿が、切ない。
もう、会えない気がして。
『ばいばい、気をつけてね』
“またね”と言わないのは、そう思う故に。