『あ、ところで、拓様?こちらのお方は…』
急にその視線が自分に向けられて、緊張する。
『あわわわ、私?!』
そんな私を、拓は優しく後ろに隠す。
隠した後ろで、私の腕をぎゅっと掴む。
逃がさない、と。
『頼稜、この人は南高校の一年生、成宮白純美さん』
しっかりと、そう言い放った拓の背中は、とても頼りがいがあった。
ようやく、落ち着いた。
『南高校?』
『ほら、秀介の行ってる、南中学の隣』
『はい。知ってはおりますが、何故そのような方と…』
何故?
そうよね。
大富豪の長男と、平凡な家の長女。
不思議に思わない方がおかしいわよ。
そう思って、泣きそうになる。
諦める、そう決めたつもりだったけれど───。