『ねえ、あの人、だ──…』
『よ、頼稜…!!』
拓の声が、私の言葉を遮る。
頼稜?
ああ!!さっきの!!!!
頼稜さんの方が、拓の付き人だったのね。
『心配しましたよ?大学からお帰りになられないから、どうかされたかと!!』
『ご、ごめん、頼稜。ちょっと用があって…』
『用があるなら、一度、私にご連絡をしてからになさって下さい、と何度言ったら良いのですか!!!!』
拓は、申し訳なさそうに、うつむく。
付き人って、こんな感じなのかしら?
さっきまでの拓じゃないみたい。
まるで、この人には頭が上がらない、みたいな。
『それで、私が必死に探しましたら、やはり!!ここにいらっしゃったんですね!!!!』
この人、いちいち声の語尾が大きい。
一瞬、こっちが怒られてるような気がするくらい、どきっとする。
拓、ここによく来るって言ってたっけ。
頼稜さんにはバレてるのね。
そう思って笑ってしまう。