『俺よりも、弟の方が知ってるよ。弟はそういう知識は、誰よりもある』
『へえ。拓には弟がいるの?』
『ああ。さくらよりも、一つ下かな?南中学に通ってる』
一つ下。中学三年生。
どんな子かしら?
あなたに似て、優しくて、美青年だったら、モテるんでしょうね。
年下。
恋愛面でいえば、私には興味がないのだけれど。
『南中学?私の、南高校の隣じゃないの』
恵が「大学生より中学生の方が出逢いがある」と言ったけれど、違ったわね。
先に、大学生の拓に出逢ったもの。
拓の弟より、先に。
『そう。だから、いつか逢うことがあるかも知れないよ』
拓は嬉しそうに、まるでそれを望んでるかのように、笑った。
私も、会ってみたい。
『あなたと似ているの?』
『うーん…そこまで似てないかもしれない。雰囲気が違う、ってよく言われるんだ』
拓の桜のように、儚く、柔らかい雰囲気とは違う?
『でも、あいつ、本当に頭が良いんだ。名前の通り』
『名前、何て言うの?』
『秀介。西条秀介』
にしじょう しゅうすけ。
───────秀。
優れている、って意味。
あなたより?
なんて聞こうとしてやめた。
実際どうであろうと、「うん」と言いそうだったから。