『さくら』


『拓、私の名前は─…』




『白純美』




今度こそ、苦しくなる。

溢れる涙を見せまいと、拓の胸に顔を埋める。


名前を呼ばれた、だけで。




『一緒にどっか行こうか。さくら』



私を体から離して、柔らかく笑った。



『え?』

『デート、しよ』



そう言って拓は私の手を取って、私が元来た道を歩き出した。



『ちょ、ちょっと?!拓?どこに─…』


『さくらに、ぴったりな場所』




柔らかく、優しく笑う拓に逆らえない。


嬉しいから、良いんだけれど。

でも、拓が何を考えているのか全くわからない。





───私の気持ち、伝えてしまいたい。

不意にそんな衝動に駆られた。


と同時に、結末を想像して怖くなった。


終わりが、全て幸せとは限らない。



けれど、好き。



この気持ちは変わらない。


もっと、知りたい。

もっと、触れたい。




貴方の全てを。