もう、晴れてるなんて……

私たちは、本当に運が悪い。



あ、桜。



吸い込まれるように、駅のそばに咲く桜のもとに向かう。


なぜか。

行かなくちゃ、って。



『おい、白純美』



海斗の声にも動じない。

もはや、私の意思じゃない。




木の下まで来ると、桜吹雪に包まれる。

散り行く花びらを受け止めようと、手を差しのべる。


一枚、舞い落ちた。


すると、私の手を誰かが掴んだ。




────────知ってる。




この手を。

触れるだけで、熱い。

その手を。



『あ、あなた…』



顔を見上げると、見えた。

あの、軽いパーマの茶髪。


見たかった、顔。


会いたかった、姿。