『やっぱり、駄目だわ』
重くてカバンを持ち上げられない。
力は、普通より少しはある気がするのに。
すると私の唸り声を聞いてか、拓が階段を上がって来てくれた。
『た、拓!!』
『俺が下まで持って行くから、さくらは先に下行ってて』
『ありがとう、気をつけてね』
私は足早に階段を降りる。
リビングに行って、忘れ物が無いか確認すると、あるものが不意に目に止まった。
『……写真、ねえ』
一度、手に取る。
お父さん、お母さん、私。
一度だけ行った旅行の写真。
持って行こうか悩んでいると、拓がすぐ傍に寄って来た。