『ねえ、拓』
『ん?』
先に車に乗り込む拓に、なるべく小さな声で尋ねる。
頼稜さんに聞かれたくないし。
『あのさ~』
『なんだ?言いにくいのか?』
貴方の声、大きいわよ!!!!
さっきのことを言ってみようと思ったけれど、何て言えば。
あのメイドさんの名前とか、全く知らないし。
恥ずかしい気もするし。
『やっぱ、いい』
拓から目線を外して、窓の外の景色を映した。
拓の家、西条には本当にたくさんの草花があるわ。
いくつあるのかしら?
全部、この目で見てみたい。
秀くんなら、その花がどんな花なのか、分かるかしら?
いつか、教えてもらいたいわ。
彼が纏う銀を脱ぎ捨てて、その核心を私に見せてくれる日が来ると良い。
暗に、もっと仲良くなれたら、と思っている。