『わあ、可愛い』
黄色いタンポポが広がる草原を見つけた。
そこまで、ゆっくりと歩いて行く。
黄色くて、可愛い。
タンポポなら、よく道端で見かけたけれど、こんな豪邸のお庭でも咲くのね。
タンポポは、綿毛に成って、新しい場所へと旅立つ。
そしてその場所で、今までとは違う、新しい生活を送るはずなのに。
『あなたは、ここから出れないのね』
この広い豪邸のお庭からは、精一杯に綿毛を飛ばしても、きっと出られない。
少し、私と重ねてみた。
私も、出られないかな?
ううん。私はそれを望んでる。
一生、拓の傍にいることを、強く願い望んでいる。
『幸せに、成ってね』
私は、タンポポじゃないわ。
─────桜。
拓の、拓だけの桜よ。
一生、このお庭から出られないことには変わりないけれど。