『……いよ』
『へ?』
『すぐに戻って来いよ』
バカね。
貴方は何の心配をしているの?
少なくとも、出逢った時にはこんな人だとは思わなかった。
恋愛とか、女の人に、こんなに真剣で、貪欲な人だとは。
そんな拓が大好き、と思う私は何なのかしら?
『バカね。私は必ず、あなたの元へ戻って来るわよ』
『なら、いい』
拓は素っ気なくそう言ってから、再び机に向かった。
その時に一瞬だけ見えた顔は、とても真っ赤だった。
貴方らしくない。
いいや。
私の前では、普段からこんな拓が“貴方らしい”のよね。
『じゃあ、行って来ます』
ベッドに私の体温と、日の温かさを残して、立ち上がった。