『さくら、あんな両親だけど、息子の俺から見ても、とても良い人だと思うんだ。だから、俺も父上と母上が大好きなんだ』
そんなの、見てれば分かるわ。
正直、あんなに温かい人たちだなんて思って無かったもの。
──────大富豪。
その品格が劣ってる訳ではなく、むしろその品格の上に、人間的な価値があるのだと思う。
私も、早く誰からも、西条に、拓に相応しい人間だと言われたい。
そう、成りたい。
『私も、拓の御両親は大好き。もっと仲良く成りたいわ』
『そうだな。だけど、父上には気をつけろよ?』
『ふふ、大丈夫よ。でも、明仁さんって、とてもかっこいいわよね。父親とは思えないくらい、若々しいし』
拓は私の言葉は返さないで、黙って手を引き、部屋の扉に向かう。
あら、ご機嫌損ねたかしら?