『す、すみません!!!!』
顔も見ずに、頭を下げて、そのまま拓の部屋へ向かおうとした。
怖い人だったらどうしよう。
やっぱりドレスでは、走れないけれど…早くこの場を立ち去りたかった。
だけど、声をかけられてしまった。
『君は、もしかして…』
不意にかかった声に、身震いしてしまう。
けれど、その声はとても優しい口調だった。
─────もしかして?
ゆっくりと振り返ると、そこには、短い黒髪で綺麗な顔立ちの男の人が立っていた。
容姿は完璧。
スラッとしていて、黒いスーツがとても良く似合う。
全体的にとても大人だけれど、とてもカッコ良くて、年がいくつか分からない。
『見とれてしまったかい?』
はっとすると、その人は楽しそうに笑っていた。
その笑顔が、拓にそっくりだった。
『あの、あなたは……』
『私は、明仁だ。西条明仁』
にしじょうあきひと。
名字が、西条ってことは、もしかして……!!!!
『た、拓の、お父様ですか?』
『そうだよ。君が、拓の……成宮白純美さんだね?』
『はい。そうです!!』
まさかの、ご対面。