心臓の音が、うるさい。
もうどうにもならないくらい、ドキドキしてる。
貴方の微笑みに、貴方が触れる手に。
『今日は寝よう。明日は父上と母上に会ってもらうのだからな。寝坊は出来ないぞ?』
そのまま抱き寄せられて、ベッドに沈む。
二人でもまだまだ余裕のあるベッドで、私たちは寄り添う。
『わ、私ここで寝るの?』
『嫌か?』
『そそそ、そういう訳じゃなくて────』
『じゃあ、一緒に寝るぞ』
私の黒髪を優しく撫でる。
拓の茶色が頬に触れて、くすぐったい。
さっきも眠ったし、全然眠くはないはずなんだけど、拓の温もりに包まれるとすぐに夢の中に行ってしまった。
最後に耳に入ったのは、拓の甘い声だった。
『白純美』
その名を、愛しさを込めて呼べるのは、貴方だけよ。
外で散る桜も、寄り添い合って眠ってしまったようだった。