拓はしばらく、うつむいていたけれど、ぱっと顔を上げた。





『じゃあ、桜をあげるよ』



『桜?』





どの?、と思って尋ねる。



その言葉を汲み取って、拓は口を開く。





『どれをあげるか、は、その時に決める』




この桜の、どれかを。



私に?




でもどうやって?



なんて考えてると、拓が次の言葉を落としていた。





『秀介、いいやつだろう?』





秀介くん。



頭にぱっと浮かぶのは、あの鋭い銀。




私を寄せ付けない、銀。




拓には、感じられないのかしら?



拓にはあの笑顔だもの、ね。