『さくら、座って』
『あ、ありがとう』
彼の茶色が、手からするりと離れる。
寂しい、とそれだけで思う。
傍にあるソファに座ると、拓は向かい側に座った。
拓の部屋は、もちろん広い。
けれど、その割りに物が少ない気がする。
大きなテーブル、
テレビ、
三人用くらいのベッド、
参考書や、分厚い本がところ狭しと並ぶ本棚。
そのほかに絵とか。
そして、勉強机みたいな机。
その上には、大学生らしい勉強道具が置かれている。
大学生なのよね、と改めて思って、微笑む。
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