お嬢様、なんてあり得ない。
私は一般人よ!!
秀介くんの思っている通りの!!
そう口を出そうと思ったら、その前に拓が口を開いた。
柔らかく、微笑みながら。
『さくらは、お嬢様だよ』
『さくら?』
その呼び名、秀介くんには通じないわよ?
と思ったけれど、秀介くんはすぐに私のことだと理解したようだった。
─────やっぱり、秀介?
それとも、拓は普段から色んな人にあだ名を付けているのかしら。
可愛いわね、だったら。
『では、どこのお嬢様なのですか?』
だから、お嬢様じゃないわよ。
秀介くんも「こんな人、お嬢様じゃない」とわかっている。
けれど、わざと尋ねる。