『では、白純美様、拓様をよろしくお願い致します。私は、車を置いてから、すぐに駆けつけますので』
一礼して、一瞬だけ私を見つめる。
よろしくお願いします、と。
『駆けつけなくていいよ。ゆっくり来て』
『しかし!!拓様にもしものことがありましたら…!!!!やはり、私、急いで参ります!!!!』
『いや、良いって。ありがとう、頼稜』
いつもは何にも、頼稜さんに反対しないのに。
しかも、頼稜さんは拓を心配して────
『さくらを、案内したいんだ。だから、なるべく遅く来て』
案内なんて、頼稜さんが居ても大丈夫じゃないの。
でも、違う。
拓の言葉の裏には、何かある。
「なるべく遅く来て」
それはまるで、二人で居たい、と言っているようなものじゃない─────。
『承知しました。拓様の言い付けでしたら、何なりと』
『ありがとう、頼稜』
そう言って、私の手を取る。
温かいその手で、
私の手を、離さない、と。