みのりよりも一歩前に出た
少年は帽子をしっかりと
その手につかんだ。

「ほら」

礼をいう間もなく
斜面を上がってかけていく。

後ろ姿は
夕日で茜色に染まっていた。


クラスの男子だった。

顔は知っていたが
ほとんど
しゃべったこともなかった。

たしか名前は
門倉樹。