「あっ」

風に乗った帽子はひらひらと
蝶のように宙を舞った。

少し急になった斜面の
木々やツタが覆う
緑の上にふんわりと着地する。

「どうしよう」

斜面を前に
みのりは立ちつくした。

「みっちゃんどうしたの」

隣に先ほどまで遊んでいた
友人が並んで立つ。

しかめ面をしていたが
みのりは勇気を出して
おそるおそる斜面に足を
踏み出す。

足元は草や枯れ葉で
きちんと地面が見えない。

少し下りたところで
手を伸ばしてみたが
帽子までは
手の届く距離ではなかった