緩やかな坂道を下り
海岸沿いを走る。

蒸し暑い車内の空気を
入れ替えるために
窓をあけた。

乾いた風と潮の香が
車の中を満たしていく。

ここで暮していれば
この香りを懐かしいとも
思わずに過ごすのだ。

それは不思議な感覚だった。


幸せだ、
私は幸せだ。

心の中でつぶやく。

自分で選んで
ここまできたのだから。

樹もそう思ってくれるだろうか。