「お兄さんには?」

そう言われると
ハッとしたように
樹はまた広場へと駆けていく。


「今、幸せ?」

「え?」

「…あ、ごめん。
お母さんが亡くなった時に
聞くことじゃないな」

「…」

自分の事のように
深刻そうな顔をした門倉に
逆にみのりは苦笑いした。

「母とはここを出て連絡を
とってなかったから。
病院に行った時も
意識はなかったし。
案外落ち着いてるの。
薄情な娘よね」

門倉は黙って聞いていた。

「わたしね、いま、
すごく幸せだよ」