ドキドキいう心臓の音が
頭にまで響いてくる。

樹を抱える手に力を込めた。
深呼吸をしながら
みのりは階段を上がる。

門倉は先ほどまで
みのりの座っていた
木のベンチに腰掛けた。


傍まで歩いてくると
門倉が自分を見上げて
いるのがわかる。

みのりは視線を合わせずに
少し向こうの地面を見ていた。


「帰ってきてるなら
連絡してくればいいのに。
あ、でも人妻だから無理か」

独特の皮肉っぽい口調。

門倉がこういういい方をするのは
照れている時だ。


この人でも久々の再会には
緊張するんだろうか。

ぼんやりとみのりは考えた。

それとも自分が
子供を連れていることに
驚いているとか。