あの頃から
樹の背中ばかり見てきた。

いつだって
自分の前からあっという間に
いなくなる。

それでも
その背中を追ってしまうのは
なぜだろう。


不意にみのりは顔を上げた。

「樹?」

さっきまで
ブランコのほうにいたのに。

公園にその姿がない。

慌ててベンチから腰を上げる。
傷んだ木のベンチは
軋んで鈍い音がした。