感謝してもしきれないといった様子の友人が、先程とは違った意味合いで泣き出しそうな表情を浮かべる。話がまとまった時点で、いままで無視を決め込んでいた河本と菅がようやく輪に加わった。
「いやあ、小野田くんは優しいですなあ」
「本当ですなあ」
「バカ、調子良いんだよお前ら。さっきまで思いきりスルーしてたくせに」
 大袈裟な素振りで俺の肩を抱く河本たちに、わざとらしく拳を振り上げる。揃って頭を庇う動作をするふたりがおかしくて、素直に俺は笑う。
 そうやってふざけあっているうちに予鈴が鳴り響いた。繰り返し礼を言う友人を席へと戻し、ようやく俺もマフラーを外すことができる。
 桂が自分の席に着きながらこちらに振り返った。片手を上げて合図すると、口元に小さく笑みを浮かべ手を振ってくれた。
「ほんとお前ら、早く付き合えばいいのに」
 呆れたように呟く河本に苦笑して桂から視線を外す。今日の放課後は断りをいれなくちゃいけないな、と脳の隅でぼんやりと思った。