学校に行くまでの道程は、この数日間に食べたものをひたすら思い返すことで今朝の失態を繰り返さないよう努めた。
 俺よりも桂の方が登校してくる時間は遅い。ひんやりとした朝の空気に満たされた教室は、きっと俺のざわめく気持ちを落ち着けてくれるだろう。
 けれども、もし桂が俺を避けてしまったら?
 心臓が軋む音がする。どんなに俺が頑張っても桂が桂の意思で遠くに行ってしまえば、俺にはどうすることもできない。
 桂の隣にいられなくなる日がこんなにも早く訪れるかもしれない事実に、指先まで冷えていく思いがした。
 ……いや。
 秋の酸素を肺に溜め込んで、静かに目を伏せる。あの変わった女が昨日の一件を気にして俺を避けるなんて、普通の女子がとるような行動をするものか。
 信号が青に変わる。俺は不安を掻き消すように自転車のペダルを強く踏み込んだ。