河本の指摘は正しかった。桂がまるで当たり前のように俺の隣にいるから、俺も桂が隣にいることをごく当たり前な生活の一部として見るようになっていたのだ。
「昼休み始まってすぐに見かけたけど、ありゃバスケ部の神崎先輩だな」
 パック入りの牛乳を片手に割り込んできたのは菅だ。彼が言っているのは例の、桂を呼び出した男子のことだろう。
「爽やかな感じのオトコマエですらっとした長身、目立ちたがるタイプじゃないけど後輩思いの優しくて誠実な先輩……って話だよ」
「あー、聞いたことある。結構隠れファン多いだろ、そのひと」
「そうそう」
 今朝と同じように勝手に話し出すふたりを一歩引いたところから眺める。菅の言葉を頼りに記憶を探れば、あまり校内の有名人情報に詳しくない俺でも容易に顔を思い浮かべることができた。
 確かに整った顔立ちをした先輩だ。
 桂はいま、あのひととふたりでいるのか。