クラスメートたちがギョッと桂を見やる。相手は先輩で、あの外見だ。
 ざわめく室内で黒髪の美少女だけが平然としていた。
「だから、臭いです。ひどいにおい。ちゃんとお風呂に入ってください」
 顔色ひとつ変えず言ってのける桂。対照的に、向かい合った女子生徒は怒りに顔を歪ませ肩を震わせた。ワナワナ、という表現はこういうときに使うのだと思った。
「あんたね、なに言ってんの!? 高い香水の香りすら分かんないの!? 馬鹿なんじゃない?」
「あら、香水は体臭を隠すためのものでしょう。こんなにきつく臭わせなくたって、きちんとお風呂に入って綺麗に体を洗えばよろしいのに」
 ヒステリックに声をあげる女子生徒に対し、桂の声音は静かで穏やかだ。嫌味というよりは、まるで親切心から来る忠告といった口調である。それがまた彼女たちの精神を煽った。